ユタージン 1
ギンネムが町をぐるりと囲んでいる
ギンネムはこの島のいたる所に生えている植物ではあるが
ぐるりと町ひとつを取り囲むギンネムはあまりに異様である
夏田 古文時(なつだ・こぶんじ)は途方に暮れていた
ナツダックという株関連の企業で働くスーパーナチュラルサラリーマン(SNS)の夏田古文時は
夏休みをそ~と~早く取るという特権を行使してこの南の島に来た
夏田古文時は準備に時間を惜しみ無く投入する男だということは、賢明な読者諸氏ならご存知であろう
まず、南極に飛んだ夏田古文時であった
本格派の男だから、氷といえば
南極の氷である
北極の氷を選ぶのが庶民的だと
夏田古文時は承知しているが…
南極の氷をクーラーボックスに入れて準備万端
南の島に飛んだ
南の島は空港からしてすでに猛暑
やはり準備が大事なのである
夏田古文時はクーラーボックスを担いで歩いた
ものすご~く重い
氷の入ったクーラーボックスを担いで歩けば涼しいはずであった
ああだが
重いクーラーボックスを担いで
猛暑の島を歩くのは
ものすご~く暑かった
バカンスといえど、スーパーナチュラルサラリーマンとなれば、常識としてスーツを着込んでいる
汗が尋常じゃなく吹き出した夏田古文時であった
夏田古文時はクーラーボックスを島のレンタカー屋のおじさんにあげて
レンタカーで島の探索をスタートさせた
北に山がある
レンタカーを降りて登ると
島のほとんどが一望できた
夏田古文時(なつだ・こぶんじ)は山を下りる
町が見えたのだ
素晴らしく美しい女性を見つけた
山の頂上からでも美しい女性ならすぐに見つけることができる夏田古文時であるのだ
車に飛び乗り全速力で町へと急ぎ素早く着いた
すると、町はギンネムに取り囲まれていて入れない
通常のギンネムより大きなギンネムが町を完全に包囲している
そこへ水牛に乗ったじいさんが通りかかった
「お忙しいところ申し訳ございませんが、なぜに町はギンネムに取り囲まれて
るんですか?」
「食べるさあ、ギンネムは町を
食べるさあ」
「ギンネムが町を食べる~?」
冗談かと思っている夏田古文時であった
「よくあることさ~東京者でしょあんたわ~だから知らんさ~
わったあ島では常識さ~」
「常識なんですか、とにかく町をギンネムから救うべきなのでは
ありませんか?」
「あんたが救いなさい、あんたならできるよ、ギンネムに町が食べられそうになっても、だいたい誰かが救うから大丈夫さ~、時々食べられる町もあるけど、たまにだから
仕方ないさ~」
のんびり過ぎる島人なのであった
「あんた、町を救いきれたらさ~町で1番きれいな娘を嫁にすることができるよ、この島の習わしだから
娘は断らんさね~」
早速救うことにした夏田古文時であった
ユタージン 2
「あんた仕事は何やってるかねえ?」
じいさんは、夏田古文時がこれから町を救おうと動き始める時に、のんびりしたことを訊いてきた
「わたくし夏田古文時はナツダックという株関連企業のスーパーナチュラルサラリーマン
SNSであります」
「わんは、この水牛と一緒に畑歩いているさー、ナカンダカラ という名前やいびん
ゆたしく」
「ナカンダカラさんは畑歩いているんですか?」
「畑歩いているというのは、畑仕事に従事してるいうことさ~、海歩いてるいゆうたら漁師で、宇宙歩いてるいゆうたら 宇宙飛行士さあねえ、あと、ゆたしくというのは、よろしくう願えさびらという
ことさねえ~」
「こちらこそよろしく
お願いいたします」
早速名刺をお渡しした夏田古文時であった
「ありっ 夏田古文時! 早く町を救いなさい、早くしないと町がギンネムに
食べられるさ~」
ナカンダカラが急に急かしたので、夏田古文時は早速動こうとすると
「ありっ、ちょっと待ちなさい あわてんぼだね東京者は、あんた株の仕事してるなら、株いま
持ってるんか?」
「もちろんですナカンダカラさん」
夏田古文時は、使い込んだ黒鞄から株を取り出した
「あいっ、立派な株だねー、スペッシャルな
株やさや~」
「ナカンダカラさん、よくご存知で、この株はナツダック製の普通の株に、わたくし夏田古文時が念を注いだスペッシャルな株です、わたくし夏田古文時は SNSスーパーナチュラルサラリーマンですから、株に念を注いで、いろんな作用を開花
させることができます!」
よっこらせと、ナカンダカラは水牛の背から降りた
「わんも一緒に町を救いたいけどよ、今回はこの水牛を貸してあげるから、夏田古文時
あんたが行きなさい」
「わかりました、わたくし夏田古文時かならずや町を救いたい所存です、ところで
この水牛さんの名前は?」
「水田水遁みずだすいとんじゃ、でもよ、ぎゅうちゃんで
いいやっしぇ」
「ぎゅうちゃん、わたくし
夏田古文時と申します」
早速ぎゅうちゃんに名刺を渡し
挨拶を怠らない夏田古文時であった
すると、ぎゅうちゃん素早く、自分の名刺を出しまして
長い角をポキリと折りまして
泥に、折った角を浸したのである
折った角をペタンと名刺に押しますと
印鑑つきの、その名刺を夏田古文時に渡したのである
折ったと思われた角の印鑑は、またカチリと、もとの角に戻したのである
「ありっ、ぎゅうちゃんが印鑑付きの名刺を渡したのは、何年ぶりかねえ、ナポレオンに
渡した以来かねえ 」
夏田古文時は水牛に乗った
すると、水牛のぎゅうちゃんは 町に突進した
ギンネムにぐるり取り囲まれた町に突進した
あわやギンネムに激突かと思われた瞬間
夏田古文時は、すでにモンダモンという株を投げていた
モンダモンという株はギンネムの壁に入り込んだ
夏田古文時が念を送る
モンダモンの株が急速発育して、ギンネムを押し開き、門を出現させた
「モンダモンの株はありふれた株だが、あいつ、手際の素晴らしいユタージンだったか、モンダモンを作用させて門を出現させやがった、スーパーナチュラルサラリーマン夏田古文時、とんでもないポテンシャルを
秘めてやがるぜ」
ナカンダカラは訛りのいっさいない独り言を呟いていたのである
ユタージン 3
モンダモンという株を急速発育させて、ギンネムの壁に門を出現させた夏田古文時
ぎゅうちゃんに乗って門から
町に入ったSNSスーパーナチュラルサラリーマン夏田古文時
町のなかは地獄であった
ギンネムの種が人々を襲っている
人より大きな種、蜥蜴のような種
長い尻尾で人に巻き付きがぶりと噛みつく大きな種
だが、トカゲに似てるのにギンネムの種であることは、すぐにわかる
薄い緑色の楕円形の胴体が、ギンネムの種を巨大にした物なのだ
タネトカゲは、逃げ惑う町の人々に襲いかかっている
逃げずに、サトウキビの収穫時に使う鎌で応戦している一団がいる
「南の島には、鎌を使う自警団、ハルサー団がいると噂にきいてました、あれが
ハルサー団ですか?」
すると
ウンモ~モ~
鎌を二本、鎌と鎌を鎖で繋いである
鎖鎌はこの島にルーツがあるのだ
鎖鎌を使い、タネトカゲ相手に
なんとかハルサー団は善戦している
だが、一般町民を守る余裕がハルサー団にはない
と思ってたら、1人だけ見事なスピードでタネトカゲの群れに果敢に飛び込んで、斬り倒して前進して、町の人々の前にたどり着いた者がいる
かなり丸い体の男であるが、動きは物凄く早い
ハルサー団の丸い男はすばしっこい
タネトカゲの尻尾を鎖鎌で
スパッと切る、しかし、すぐにタネトカゲには新しい尻尾が生える
タネトカゲを胴体からスパッと切る、切り離された胴体はすぐにくっつく
結局、鎌だけでタネトカゲをやっつけることはできないようだ
ストプトの株に念を込めて、丸い男の鎌の柄に投げつけた
夏田古文時が投げたストプトの株が鎌の柄に巻き付いた
「ハルサー団の丸いひと、これでタネトカゲは
再生しません」
「にへ~で~びる、わんの名前は
ムンフリやっさ」
ハルサー団のムンフリはストプトの鎖鎌で次々とタネトカゲを倒してゆく
ストプトの株をハルサー団すべての鎌に作用させた夏田古文時である
ハルサー団は、まるでサトウキビの葉っぱを処理するように、タネトカゲを次々と撃破
夏田古文時はあの美人さんを
探して町中をぎゅうちゃんの背に揺られ駆け回っている
町には一軒だけ映画館がある
そこから悲鳴が聞こえてきたのである
「ぎゅうちゃん!あの映画館に!
急いでください」
ユタージン 4
夏田古文時はぎゅうちゃんの背に揺られ
悲鳴が聞こえてくる映画館へと
突進する
キャー
ンギャー
と
悲鳴が激しさを増していた
映画館の扉を、ぎゅうちゃんの逞しい角が、ドカリと打ち破り、なだれ込んだ
すると、スクリーンでは阿鼻叫喚のホラー映画クライマックス
悲鳴はホラー映画の悲鳴であった訳だ
「仕方ない、途中からですが、なかなか面白そうじゃありませんか、映画鑑賞と洒落込むことにしますか
ぎゅうちゃん」
夏田古文時はポップコーンをぎゅうちゃんと一緒に食べながら、ホラー映画のクライマックスを鑑賞する
夏田古文時とぎゅうちゃんはホラー映画に夢中であった
その間、ハルサー団はタネ蜥蜴をすべて倒した
映画館から聞こえくるホラー映画の
ギャー
ドギャオ
という声に驚きハルサー団が映画館に突入
すると、ポップコーンを
鼻の穴に詰め込まれ、椅子に縛りつけられた夏田古文時
すわ
ハルサー団は夏田古文時を縛りつけたロープを鎌で解き放つ
鼻の穴に詰め込まれたポップコーンは
ハルサー団全員で分けて
ぼりぼり食す
「ナツダックのエリートサラリーマンがなんで縛られてたのか~?
誰にやられたのか~?」
ハルサー団の太っちょリーダー、ムンフリが
夏田古文時の猿ぐつわを解いてやる
「ありがとうございますムンフリさん
助かります」
「あんたナツダックのスーパーナチュラルサラリーマンなのに なんでこの映画館の椅子に縛られていたの? 」
「犯人… いや、犯牛は水田水屯 つまり水牛のぎゅうちゃんです、油断していたら、鼻にポップコーンを詰められていました、僕の弱点の一つが、鼻にポップコーンを詰められる
ことなんです」
「おかげさんで、わったあハルサー団は夏田古文時さんの鼻の穴エキス付きのポップコーン食べさせてもらったさあ、そしたらみんな、念のパワー少しアップね、少しアップね
夏田古文時さん」
ハルサー団の太っちょリーダー ムンフリは 「少しアップね」 という部分が気に入ったらしく
何度も「少しアップね」「少しアップね」と繰り返した
夏田古文時は、すぐさま映画館を飛び出した
あの美人を探して町中を駆け回る
最後は油断してぎゅうちゃんに
縛られたが、夏田古文時の活躍が町を救ったことに違いはない
あの美人は夏田古文時の嫁さんになるはずである
すると、町のはるか遠くの農道に、ぎゅうちゃんらしきものが
すわ
株を取りだし、念を込めると、望遠鏡の出来上がりだ
望遠鏡で確認する
やはり、ぎゅうちゃんである
背中にナカンダカラと美人さんを乗せて
ゆったりと農道を東へ向かい進んでいる
ウマッタラという株を、黒いビジネス鞄から取り出したのは
ご存知、スーパーナチュラルサラリーマンSNS
夏田古文時その人である
そっと、ウマッタラの株を大地に置く
ウマッタラの株はレア株である
だから、使い捨てになどできないから、あまり大量の念を注がないようにする
それが難しい
思い切り念を注ぐほうが簡単である
大量の念を株に注ぐと、その株は再使用できない
使い捨てにできないほどレアな株に、慎重に念を注ぐ
これは非常に気を使う作業なので、逆に、大量の念が空気中に無駄に放出されてしまう
ぐったりとなった
だが休むわけにはいかない
ぎゅうちゃんたちを追いかけねばならない
念を慎重に注がれたウマッタラの株は大きくなっている
夏田古文時はウマッタラに乗った
ユタージン 5
町を覆っていたギンネムは急激に枯れて萎んだ
町の人たちが枯れたギンネムをかたずけている
町の近くに、夏田古文時が乗っていたレンタカーが行儀良く待っていた
「あっ、しまった、レンタカーがあったんだ、無駄に念を使いウマッタラを生成する必要など
なかったんだあ」
レア株であるウマッタラを株に戻して黒いビジネス鞄に入れる
それからレンタカーに乗り、ぎゅうちゃんたちの後を追う
「ぎゅうちゃん、なぜわたくしを縛ったのですか、あっ、ぎゅうちゃんって言ってしまってた、ぎゅうだ ぎゅうだ、あんなやつ、ぎゅうでたくさん
ですから」
コンテヨロスーという黄色いスポーツカー
オープンな風に吹かれても頑なに七三にキープされた髪
静かな意志の体現としてのビジネススーツ
ご存知SNS スーパーナチュラルサラリーマン夏田古文時その人である
『コンテヨロスー』というクルマをご存知の方もいらっしゃいますか
ヨーロピアンイエローにしか塗らないオープンカー
かつてF5に住んでたレンタカー屋のおっさんが
中野からわざわざ取り寄せた
島一番のスリムカーである
ぎゅうちゃん、いや、ぎゅうを追ってレンタカーを走らせる夏田古文時である
入道雲の雄大さ美しさの下の
農道を慎重にゆく夏田古文時
すると
ハイビスカス揺る下を
ヒップが右に向かうクイッと右に向かう
左のヒップが右に向かう振りをして
右のヒップが左に向かう振りをして
やはり右は右に
左は左に
なれどヒップの方向などどうでもよくて
ポップな内腿の方向を気にして
ポップなヨーロピアンイエローのスポーツカーを尚更ゆっくり運転しているのは
SNSスーパーナチュラルサラリーマン夏田古文時その人である
農道に似合わぬハイカラな若い娘さんが長い黒髪にハイビスカスを飾り
ゆっくり歩いているではないか
ヨーロピアンイエローのスポーツカーが若い娘さんのヒップを追尾している
ハイビスカスの彼女のヒップは溢れる躍動感
ナチュラルなダンス
挨拶を誘発する
「ふにゃーにらにゃい」
ご存知SNS(スーパーナチュラルサラリーマン)夏田古文時は
習いたての島言葉で挨拶をしてしまつた
魅力溢れるヒップに挨拶をしてしまつた
振り返る彼女は
さすらいのユタ
ユターシャ
ご存知
SSU(さすらいのユタ)ユターシャその人である
流れ流れる麗しい黒髪の大河
微笑みの銀河
世界中の美が後退りして踵を返し逃げ出す
圧倒的美少女
「ふにゃーにらにゃい?ふにゃーにらにゃいは、いらっしゃいという意味ですよ
お招きくださるの?」
ポップなサンシンのような麗しい声
いや、実際に、美少女はサンシンをポップに鳴らしながら話をする圧倒的美少女なのである
「あの、その、ヒップがポップでして
挨拶が、お招き、でして」
夏田古文時
しどろもどろな夏休みの昼下がり
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